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二OOO年前後になると、期待が期待を呼ぶ自己増殖的なプロセスに入り、一転崩壊に向かった。
その崩壊過程は、米国への一極集中的な資本移動下でのドル高と、その後のドル安転換と表裏一体の関係にある。
新興企業関連の株価指数であるNASDAQ総合指数の上昇はさらに顕著で、同じ五年間で約四倍、なかでも通信(テレコミュニケーション)部門指数は同六倍にもなった。
この株価急騰が米国の経済成長を二つのルートを通じて加速させた。
企業の資金調達コストの低下を通じた設備投資の促進効果だ。
株高は企業の収益力への期待や企業経営への信頼感の高まりを意味する。
したがって、株価が上昇する中では、新規の株式発行による資金調達が容易になるのに加えて、社債を発行する際の金利スプレッド(国債等と比べてリスクが大きいとされる社債の利回りに求められる上乗せ分)も縮小するか低位で安定する。
二OOO年にかけては企業が毎年の営業活動で得られる内部資金(税引き後利益に減価償却等を加えたもの)をはるかに上回る投資を行っていたことがわかる。
実物投資に対して内部資金が不足する分(ファイナンス・ギャップ)は外部から増資や借り入れなどを通じて調達しなければならない。
ピ−ク(二〇〇〇年)ではギャップが三OOO億ドルを超える規模となっていた。
大量の外部資金が安い(と企業が思う)コストで調達できたからこそ、こうしたことが起こったと考えられる。
実は、資金コストが本当に安かったのかどうかは、調達した資金を投資したプロジェクトからそれを上回る収益が上がって初めて言えることである。
二OO一年以降、IT関連企業が相次いで破綻したり、設備を削減したりしたことから判断すれば、大規模な見込み違いが発生していた。
しかし、いずれにせよ、二OOO年にかけての米国の設備投資はコンピュータ関連設備のすさまじい伸びに押し上げられ力強いブームになっていた。
九六〜ニ〇〇〇年の民開設備投資は年平均で一〇・一%増加したが、特にコンピュータと周辺機器は同三九・O%、水準で約四倍に拡大したのである。株高が米景気を押し上げた第二のル−トは金融資産の値上がりにより、家計が将来に備えて貯蓄する必要性が減り、消費が増加するという「資産効果」である。
九八年〜ニOOO年半ばにかけて家計の純資産が急増し、可処分所得の六・二倍に達した。
家計は株式を売り越していたが、投資信託や保険会社を通じた間接的な保有が増加していたことと、既に保有している残高において発生した値上がり益が極めて大きかったためである。
家計貯蓄率は、純資産の急増と逆行する形で九六年平均の四・八O%から二〇〇〇年には〇・九六%と一%を下回るレベルまで低下している。
株価の値上がり益による金融資産の増加が耐久財を中心に消費を刺激(家計の実質耐久財消費は九八年に前年比二・三%、九九年には同二・七%増を記録)したからである。
ベピーブーマ−世代の高齢化など、人口要因が貯蓄率を押し下げていたとの指摘も一理あるが、金融資産の値上がりによる消費ブームの影響がやはり大きかったとみるべきであろう。
これらを受けて米国経済の成長率は加速した。
九六−九八年にはアジア危機や−TCM危機によって撹乱された部分もあったが、ブーム後半に入った九九年には前年比四・五%、二OOO年は年後半には景気が減速したものの、それでも三・七%成長を達成した。
企業の設備投資(九九年前年比九・二%、ニ〇〇〇年同八・七%)と家計消費(同それぞれ五・一%増、四・七%増)が主導した。
株高が景気の加速をもたらし、景気の加速が企業収益を押し上げて、さらなる株価上昇への期待につながる循環が強まっていった。
米国のプ−ムの背後には、産業構造の変化という実物経済的要因と、株価上昇が景気を刺激し、企業収益の増加を通じて、さらなる株価上昇につながっていくという金融的側面が混在している。
実物経済・産業の構造変化は本来ならかなりの期間をかけて徐々に現れてくるはずだ。
おそらく、九九〜二OOO年初頭にかけての株高の最終局面におけるいずれかの時点で、金融的要因によってもたらされた景気や企業収益の蜘伸び率の加速が「ニュ−エコノミー」がもたらす恩恵の「証拠」となり、さらなる期刈待を創り出すという、自己増殖的プロセスに入った。
企業収益などの裏付け岬のない領域に株価が押し下げられていったと考えられる。
臨実際、ニOOO年前後にかけて各種の指標を見ると、米国の株価は従来の尺度では米正当化しにくい領域に達していたことがわかる。
S&P五OO指数について株価収益担率(PER、株価÷毎年の収益)を見ると、一九九九年後半には三五倍前後となっていた。
株式への投資資金を足下の収益で回収した場合、三五年以上かかる、換言すれば三五年以上先の収益まで今買っているということを意味している。
もう一つの例として、FRB(米連邦準備制度理事会)の資金循環勘定により、企業の株価の時価総額と企業の純資産(生産設備・在庫や特許など有形・無形の資産や金融資産を時価評価したものから負債を引いたもの)の比率であったニOOO年三月末には一九二・一%に達していた。
企業の持っている資産の二倍近い株価がついていたことになる。
こうした過剰な株価上昇は二〇〇〇年三月前後に転機を迎えた。
株価は何回かの反発局面を挟みながら二OO二年一O月にかけて大幅に下落、二OO三年後半に反発するまで低迷が続いた。
ピークから最安値までの下落率はS&P五OO指数でも五〇・五%、NASDAQ総合指数では七八・四%に達した。
特に二OOO年前半にかけてもてはやされた通信関連のスタ−企業については、株価の騰落はすさまじいものであった。
ネットワーク関連機器メーカー大手のシスコシステムズのケ−スで、二OOO年三月に株価が八二・〇〇ドルでピ−クをつけた後、二OO二年一O月の最安値では八・一二ドルと九〇・一%も下落した。
この他、光ファイバー大手のコ−ニング(二〇〇〇年九月の二三・三三ドルから、二OO二年一O月の一・一〇ドルへ九九・O%の下落)、通信機器大手のルーセントテクノロジーズ(九九年一二月の六四・六九ドルから二OO二年一O月の〇・五五ドルへ九九・一ここで例に挙げた各社は今回のブームとその崩壊を乗り切り、現在でも生き残っている企業であり、二OO三年後半から今日にかけて株価はある程度持ち直している。
それでもかつてのピ−クを回復したものは極めて少なく、むしろ株価が反発してもなぉ、最高値に対して五割〜九割低下している例が多い。
こうした株価の乱高下がどうして発生したのか。
それを見た上で、米国経済、ひいては世界経済に与えた影響を検討しよう。
九〇年代後半の米株価急上昇の要因をつきつめれば、ITの普及ともたらす経済・社会の構造変化(ニュ−エコノミー)により、経済と企業収益の中期成長率が加速するとの期待にいきつく。
ようになったのは、-九九六年一二月のビジネス・ウィーク誌の特集「ニュ−エコノミーの大勝利」ニューエコノミーが経済や金融市場に持つ意味は論者によって異なり、簡単に総括することは難しい。
中核となるコンセプトは、ITの普及・応用の広がりが労働生産性の押し上げを通じて単位当たり労働コストを押し下げ(したがって企業の利益率を改善させて低インフレの下での高成長を可能にさせる、ということである。
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